Kenji Tanaka Seminar's Web site (田中ゼミ) : VAPOR_WRF

WRFの出力結果をVAPORで可視化する

VAPORでは、3次元の数値データを可視化していく上で、可視化用に書式が最適化されたデータセット(可視化用のデータ)と、最適化されたデータセットを読み込み、可視化ソフト内で管理するためのメタファイル( .vdf ファイル )が必要になります。これらを作成するときには、端末上でコマンド入力により行います。VAPORでは、データファイル、メタファイルの作成を行うコマンドは数種類ありますが、ここでは、最も多く用いられるとされる WRF の計算結果を使った処理について述べます。

可視化用のデータとメタファイルの作成

wrf によって計算した気象場を VAPOR で可視化するためのコマンドとして、wrfvdfcreate と wrf2vdf があります。
 wrfvdfcreate は可視化用のメタファイルを作成するコマンドです。

wrfvdfcreate [options] wrfout_files vdffile

wrfout_files は、WRFの計算出力ファイルで、複数個のファイルを指定することができます。末尾の vdffile は、可視化に使用するメタファイルです。

[例] Domain 1 の計算結果に関するメタファイルを作成する(csh)
set WRFOUT=/work1/WRF/WRFV3/test/em_real
wrfvdfcreate $WRFOUT/wrfout_d01_* domain01.vdf

この作業により、domain01.vdfが作成され、可視化データ用のディレクトリ domain01_data が作成されます。

 可視化用のメタファイルを作成したら、wrf2vdfメタファイルの情報から可視化データを作成します。

wrf2vdf [options] vdffile wrfout_files

ここで、vdffile と wrfout_files の順番が wrfvdfcreate コマンドと逆になっていることに気を付けてください。順番を間違えると、エラーメッセージが返ってきます。wrf2vdf コマンドを実行すると、データ用のディレクトリの中に、変数名のディレクトリが作られ、その中に、VAPORで使用する可視化用のデータ(netCDF形式)が保存されます。
 メタデータが domain01.vdf のとき、変数 U のデータは、 domain01_data/U/U.0001.nc0 というようにデータファイルが名づけられます。U.0001.nc0 の名前の中で、真ん中の4桁の数字はタイムステップ番号を表し、末尾の .nc0 は netCDF 形式を表す拡張子で、数字の 0 は、解像度レベルを表します。解像度レベルは 0 が一番粗く、1, 2, ... と番号が大きくなると、解像度が高くなります。通常は、0, 1, 2 の3種類のレベルの解像度を持つデータが作られます。

可視化を行う変数の種類を設定する

 WRFの計算出力データのうち、データに登録されているすべての変数を可視化に用いるとは限りません。wrfvdfcreate コマンドには、変数の選択や追加に関するオプションがあり、可視化に必要なデータのみを選んで作業することができます。

-vars2d 変数名 : 水平2次元の変数の選択。変数を複数選ぶときには、コロン(: )で区切る。-vars2d オプションを省略すると、全ての2次元変数を可視化用データとして使用する。
例] 基本的な地上気象要素を選ぶ
wrfvdfcreate -vars2d U10:V10:T2:Q2:RAINC:RAINNC:PSFC wrfout_d01* domain01.vdf

-vars3d 変数名 : 空間3次元の変数の選択。変数を複数選ぶときには、コロン(: )で区切る。-vars3d オプションを省略すると、全ての3次元変数を可視化用データとして使用する。
例]
wrfvdfcreate -vars3d U:V:W:T:QVAPOR:ELEVATION wrfout_d01* domain01.vdf

オプション -vars2d, -vars3d を省略すると 出力データに収められている 2次元・3次元変数を全て可視化用の変数として選択します。下のスクリーンショットは、オプションを省略したときに、表示されるメッセージを映したものです。
Fig-011.png
各項目の説明は、WRFユーザーガイド第5章のWRF Output Fields に記されています。

-dervars 変数名 : WRFの出力データに入っている変数を使い、変数名としてリストした変数を算出する。
例]
wrfvdfcreate -dervars UV_:UVW_:omZ_ wrfout_d01* domain01.vdf

-dervar オプションで追加できる変数は以下の通りです。
UV_ : 平面2次元風速より計算されるスカラー風速
UVW_ : 3次元風速より計算されるスカラー風速
PHNorm : 無次元のジオポテンシャル高度 (PH+PHB)/PHB
PNorm_ : 無次元気圧 (P+PB)/PB (P: 基本場からの気圧偏差、PB:基本場の気圧)
Pfull_ : 全気圧 P + PB
omZ_ : 渦度(鉛直成分)
Theta_ : 温位 ( T + 300 ) (K) ( T は温位-300 (K) )
TK_ : 気温 (K)

背景の地図イメージを作成する(要ネットワーク接続)

WRFの計算出力データには、各格子点の土地利用コードや標高データが入っていますが、これらの代わりに、衛星写真などの地図イメージを背景として取り込むことができます。

getWMSImage -r 1024 768 -o domain01.tif -m BMNG -t 84.8627 13.1314 155.137 52.2915

-r オプションの後の2つの数値は、画像のピクセルサイズ( 1024 × 768 ) を表します。
-o オプションで、保存する画像ファイル名 ( .tif 形式 ) を指定します。
-m オプションで、地図イメージの種類 ( BMNG, landsat, USstates, UScountries, world, rivers ) を選びます。大陸スケールの領域の場合は、-m オプションを省略して、デフォルト(BMNG)に設定するのがいいでしょう。
-t 背景(海域など)を透過色にする。
末尾の4つの数値は、領域西端の経度、領域南端の緯度、領域東端の経度、領域北端の緯度の順に表しています。順番を誤ると、切り出したい地図範囲と異なる結果になりますので、ご注意ください。

domain01.tif